「どうした?食べないのか?」

なかなか手を出さない私に、咲耶姫様が不思議そうな顔をして尋ねた。

「いや、だってお供え物ですよね。私が食べてもいいのでしょうか?」

「いいのだ。私がいいと言うのだから。それに一人では食べきれぬ」

さも当たり前のように言う。
この方が山の神様で、路頭に迷う私を助けてくれて、そしてお供え物のお菓子を提供してくれている。

どんな現実?
いや、もしかして夢とか?
死語の世界とか?

訳のわからないシチュエーションに、私は戸惑いを隠せない。

「では、私も一緒に食べよう。それでどうだ?」

そう言うと、咲耶姫様はポテチを一枚口に放り込んだ。パリッと良い音がする。そしてチョコの袋も封を開けた。

「甘いものもほしい」

ふわりとチョコの甘い香りが鼻を抜ける。
食欲が刺激されて私は唾をゴクリと飲んだ。

「えっと、じゃあいただきます」

意を決してお菓子に手を伸ばすと、咲耶姫様は満足そうに微笑んだ。
いちいち綺麗でドキッとしてしまう。

神様って綺麗なんだな。。。

ほうっと見とれていると、咲耶姫様は別のポテチも封を開ける。

「これは何の味だろうか?」

「ゆず塩って書いてありますね」

「うん、旨い。お前も食べてみろ」

「え?はい、いただきます」

私の食べる姿を見て、咲耶姫様は優しく頬笑む。

「これも食べてみるか?」

「あ、ちょっと、そんなに食べれませんって」

次々にお菓子を開けようとする咲耶姫様に、私は慌てて待ったをかけた。止めないとあれもこれも味見をしそうだ。ポテチ二袋とチョコレートも二人で食べきれるか心配なのに。そんな気を遣っていただかなくともっ。

そんな気さくな咲耶姫様の魅力に、私はどんどん引き込まれていくようだった。