私が凝視しすぎたのか、その美人さんは慌てて袖で顔を隠すような仕草をした。
それに伴って私も我に返る。

「あ、えっと、すみません。勝手にお邪魔して。あの、えっと、雨と雷が止むまで雨宿りさせてもらえませんか?」

きっと神社の管理人だと思い、申し訳なくもお願いすると、その美人さんはとても驚いた顔をして私を見た。

「お前、私が見えるのだな」

「え?はい?」

見えるもなにも、先に声をかけてくれたのはそっちじゃないのかと不思議に思う。
と同時に、この美人さんはもしかして見えてはいけない何かなのかと、思わず身構えた。

「こちらへ来るがよい」

美人さんは手招きをしながら奥の襖を開けた。襖の向こうからは明るい光が漏れている。

これは、行ってはいけないやつ、とかじゃないよね?
美人さんは何者?
幽霊、とか?
食べられたりしないよね?
襖の向こうは別世界とか?
まさか?

一瞬のうちに悪い考えがどんどん浮かび、私の足は動かない。美人さんと襖を交互に見てしまう。

「何をしているのだ。寒いだろう?中へお入り。何もとって食おうなんて思ってはおらぬ」

私の心を見透かしたかのように妖艶に微笑む彼女の瞳に、まるで吸い込まれるように私は歩を進めた。