「おい、谷口。ランチ行くぞ。」
「え?え、あ、ははははい!」
谷口はガタリと椅子を鳴らして慌てて立ち上がると、俺の後ろをひょこひょこ着いて来た。
「そば食えるか?」
「あ、はい。だ大丈夫です…すみません。」
会社の近くのそば屋に入ると、運良くすぐにテーブルにつけた。
「ほら、メニュー。」
「あ、す、すみません……。」
メニューをきょろきょろと見ていた目が、伺うようにチラッとこっちに向く。
「決まったか?」
「いえ…、あの…神崎さんは、き、決まってるんですか?」
「俺はいつもざるそば。」
「す、すみません!お待たせして!あ、じゃあ、あの、わたしも…同じものを…!」
別に言うほど待っていないが、谷口は今にも罪悪感に押しつぶされそうな顔をしている。
こいつと会話すればする程、気になる部分が出てくるが、とりあえず注文して、そばを待つ間に本題に入ろう。