「良かったな。病気とかじゃなくて。」
「はい!」
あれから車で谷口と猫を乗せ、病院へ行ってきた。
猫は幸いにも、怖くて道路から動けなかっただけで、どこも怪我はしていなかった。
ダニも少なく毛並みも野良にしてはキレイらしく、獣医曰く、おそらく元飼い猫で捨てられたのではないかという事だった。
「すみません、お休みの日に……。車まで出してもらっちゃって……。」
助手席で子猫を抱きながら、申し訳なさそうに小さくなる谷口。
「別にいいけど……。お前、これから、こういう時はもっと他に頼るべき奴がいるんじゃねぇのか?」
「え……?」
考え込む谷口。
「……あー、ほら。合コンの。メシ行くって言ってた奴とか。」
そう言えば、あぁ!と直ぐにピンときた顔になった。
「三津利さんですか?でも、悪いですし……。一番最初に浮かんだのが、神崎さんだったので。」
「じゃあ、今後はその三津利さんとやらを一番最初に思い浮かべろよ。」
「え?どうして、そんなこと言うんですか?」
「……。」
なにも言えないでいると、谷口がまたあの不安そうな、自信無さげな表情になる。
そして、膝の上で、ぎゅっと握りこぶしを作っているのが見えた。