「えぇ……んと……いない、です!」
母猫とはぐれたのだろうか。
それとも、捨て猫か?
どっちにしろ、このまま放ってはおけないな。
「じゃあ、とりあえず病院だな。今、どこにいるんだ?」
「えと…会社の近くの……。」
「わかった。行くから待っとけ。」
「え!」
「あと、タオルとかハンカチもってんなら、それで包んでやっとけ。」
「は、はい!」
電話を切ると、俺は急いで家を出た。
全く、いつまでも手の掛かる。
けど、イライラはしない。
むしろ、久しぶりの会話に、久しぶりの世話焼きに、どこか嬉しさを感じていた。
俺も、大概だな。