「おい。落ち着けって。どうした?何があった?」
なるべく優しくゆっくりとそう言えば、一呼吸おいて、谷口の震える声が返ってきた。
「あ、あの……!ネコ!拾ってしまいました!」
「はぁ?!」
思わず、素っ頓狂な声を上げてしまった。
予想もしていなかった答えに、一気に肩の力が抜ける。
「あの、子ネコが道のまん中に落っこちてて!全然逃げなくて!今、その横の歩道にいて!あの!えっと!」
「わかった、わかった。とりあえず、落ち着けって。」
「わ、わたしどうすればいいですか?!」
まさか、後輩から猫を拾った場合の相談をされるとは……
けど、あまりにも必死に、それも一番に俺を頼ってくれたことが、なんだか嬉しかった。
「あー、近くに母猫らしいやつは?」
「ハハネコ……。」
「塀の上とか、排水溝の中とか。あと、垣根があるならその中とか。」
そう言えば、電話越しにガサガサと移動したり何かをどかす音が聞こえてくる。