仕事を終え、帰り道。
夕焼けを過ぎて、辺りは薄暗くなり始めている。
近道になるからと公園を通り抜けようとした。これが、間違いだった。
「…っひ。うっく……ひっく……。」
微かに聞こえたその震える声に聞き覚えがあり、どうしようか少し悩んで脇道に逸れた。
その先の白いベンチに座る1つの影。
黄昏時とはよく言ったものだが、ぼんやりとした輪郭になっている筈のその人影を、俺は何故かあいつだと分かってしまった。
分かってしまって、放っておくことは出来ない。
「おい。俺にすごまれても泣かなかった奴が、なに泣いてんだ。」
はっとして顔を上げたその顔に、また涙が一筋伝った。
「神崎さん……っすみません。」
谷口は、涙を隠すように慌てて下を向いて袖で目元を拭った。
「なんかあったのか?」
「……え?」
きょとんとした顔に残る涙の筋と、赤く腫れた目。
あぁ、イラつく。
どうして、こいつは泣いてるんだ。