それからは、挨拶はするものの谷口と会話することは無くなった。
というか、なんとなく避けてしまっていた。
「あの、神崎さん。ちょっといいてすか?ここの資料なんですけど…、」
仕事の事を訊ねられても、つい冷たくしてしまう。
「悪い。山岸に聞いてくれ。あいつ、確か昨年担当してた筈だから。」
「…わかりました。失礼します。」
そう言えば、何か言いたげにはするが、素直に山岸のところへ行った。
「はぁ……。」
どうしてだ。
上手くいかない。イライラする。
あんな顔をさせたい訳ではないのに。
ため息をつけば、ひょっこりと田原が現れた。
「あっれー?谷口っちゃん係どうしたの?」
どうやら、今のやり取りを見ていたらしい。
本当に、こいつは俺と谷口が絡むとどこからともなく現れる。