「そんな、暗い声だすなよ。卒業だ!卒業!お前はもう一人前だよ。」
「卒業…ですか?」
「あぁ。先輩、後輩の立場は変わらねぇんだから、もし何かあったら相談ぐらいのってやるよ。」
「…わかりました。今まで、本当にありがとうございました!わたし、神崎さんには感謝してもしきれません!」
「いいって。大したことしてねぇよ。」
「いえ!本当に、ありがとうございました!わたし、これからもがんばります!」
「あぁ。頑張れよ。」
これが最後の電話だと思うと、名残惜しい。
だが、いつまでもだらだらと話していれば、せっかくの決断が揺らぎそうだ。
「じゃなあ。」
短く、そう一言だけ言って、画面をタップした。
これで、よかったんだ。
俺の役目はこれで終わりだ。
こいつを一人前にする目的も果たせたんだ。
けど、どうしてだろう。
無くなると思っていたイライラは、少し形を変えて、俺の中に居座り続けていた。