「ちょ、ちょっと待ってください!神崎さん!わたし……、」


「悪いけど、俺も最近忙しくてな。残業になることも増えてたから、ちょっと困ってたんだ。電話もなかなか出れなくなるだろうし、もう今日で終わりにしよう。な?」





自分でもびっくりするぐらい、すらすらと言葉が出てきた。

嘘じゃない。

実際に、残業は増えてきたし、今日も電話に出れたのは偶然で、本来ならまだ会社に居るはずだった。





「そうですか……。すみません、わたしのせいで、ムリ…されてたんですね……。」






谷口の消え入りそうな声に、心が痛む。





俺がこう言えば、谷口が引いてくれるのは分かっていた。

こいつは、人に迷惑をかけるくらいなら、自分が我慢すればいいと考えるやつだ。

俺は、そんな谷口の優しさにつけ込んだ。



けど、これはこいつの為なんだ。