「神崎さん?なんか、怒ってます?」





つい、黙り込んでしまっていた。

谷口の不安そうな声にはっとして、慌てて取り繕う。





「なんでだよ。…めでたいことじゃねぇか!」





そうだ。

俺は、こいつを一人前にする為に色々とやってきたんだ。

こいつの為に、そして自分がイライラしない為に。



これ以上、この関係を続けていれば、俺はこいつの邪魔になってしまうかもしれない。

俺が、こいつの成長の妨げになるかもしれない。

それなら……






「そうだ!もう、俺のアドバイスなんて必要ないんじゃねぇか?」






俺は、努めて明るく、軽い調子でそう言った。







「え?」





谷口の戸惑う声が聞こえたが、構わずに話を続ける。






「ほら、これからは連絡先もらったっていう、そいつを頼ればいいじゃねぇか。あぁ、俺もやっとお役ごめんだな!」