俺の気持ちに気付くはずも無い谷口は、更に話を続けた。
「しかもですね!なんと!わたし、連絡先も交換してもらえたんです!」
嬉しそうにそう言った谷口の言葉を、一瞬理解できなかった。
頭が思考を止めたのか、急に耳から入ってきた情報を処理してくれなくなった。
「え?」
「せっかくこんなに楽しかったし、またご飯でも…って!」
「……そうか。」
そう答えたものの、その先は何と言えばいいのか分からなかった。
どうして、こんな気持ちになる?
喜ぶべきことなんじゃねぇのか?
谷口の努力が実って、成長して、やっと人並みの経験を積んで、社会人として仕事もプライベートも上手くいくようになってきたんだ。
先輩として、一緒に喜んでやらないといけない筈だ。
なのに、なぜだろう。
俺以外との輪を広げていくのを、そして俺以上を見つけていこうとするのを、邪魔してやりたいと思ってしまっている自分がいる。
こんなの、先輩失格だ。