帰り道、あの公園を通る。
あいつが泣いているのを見つけた、あの白いベンチ。
なんとなく、真っ直ぐ家に帰る気になれなくて、そのベンチに腰掛ける。
ぼんやりと、暗く静まり返った辺りを眺めていると、
《♪〜♪〜♪〜》
不意にスマホが鳴った。
まさか…
そう思いながら画面を見ると、谷口の文字。
いつもの時間は過ぎているが、間違いなくあいつからの着信。
「もしもし?」
「お疲れさまです!谷口です!」
いつもより少し大きい声と、弾むようなテンション。
酒を飲んだのだろうか?
こいつの声を聞いて、静かな時間から、一気に現実に戻ってきたような感覚になった。
と、同時に何故か安心した気持ちになって、つい口をついて、本音が出た。
「……今日はかけてこないのかと思ってた。」
「あっ!合コンだったからですか?でも、毎日電話するって約束ですし!」
「そうだが、別に今日くらい、いいのに。」
律儀なやつだな、ほんと。