「神崎さん。今、少しいいですか?」
「おう。」
谷口に呼ばれて顔を上げる。
「明日の会議の資料なんですけど、ここの数字が……。」
あぁ、これか。
「それは、去年のと比較したデータを……」
説明してやると、
「ありがとうございます!」
と、丁寧に頭を下げていった。
あいつ、挨拶以外も普通に話せるようになってきたな。
前までは、仕事で解らないことがあっても、誰にも質問出来ずにいたのに。
見かねた俺が声を掛けるまで、ずっとうだうだしてたっけな。
もう、俺が何も言わなくても大丈夫かもな。
そんなことを思ってると、隣から、
「谷口っちゃんが、あいさつだけじゃなく普通の会話を……しかも、鬼の神崎相手に!」
という声が聞こえた。
見なくても分かる。
俺と谷口が絡むと、素早く察知して、どこからともなく現れる。
こいつ、ちゃんと仕事しているんだろうか。