「そのー…えっと……。」
遂に言葉が出て来なくなったのか。
もう、限界だ。
「谷口ぃ!はっきり喋れ!」
一言喝を入れれば、谷口は弾かれたように返事をした。
「はいぃぃぃ!カフェで上手く話せる自信がないのて、助けてください!!」
そして、息継ぎ無しの早口での返答。
全く、こいつは……
「はぁ……。」
「あの……神崎さん?」
「お前は、俺が褒めてやったそばから、なに弱気に戻ってんだ!このど阿呆!」
「す、すみませんー!!」
「あと、弱気に戻った途端、悪いクセ出まくりじゃねぇか!直せ!」
「がんばります!がんばりますからー!!」
結局、またこいつを怒鳴るはめになった。
今朝、成長したと感心していたのが嘘のようだ。
まだまだ、手のかかる。
あぁ、でもなんだろう。
やっぱり悪くない。
面倒くさいことは嫌いだし、自分の努力じゃどうしようもない事も嫌いだ。
恋愛もだが、谷口のこともそうだ。
なかなか、自分の思い通りにいかない。
振り回される。
でも、放っておけない。
なんとかしてやりたいと思ってしまう。
イライラすることも多いが、たまに生まれる穏やかな気持ち。
その理由を、今はまだ考えたくなかった。