「おい!谷口!ちょっと来い!」
課長が、フロアの端まで聞こえる声で呼べば、谷口はガタン!とイスから飛び上がった。
「は、ははは、ハイ!」
声を聞いた誰もが、アイツが何かやらかしたとわかる課長の声色に、谷口は顔を青くしながら、小走りで課長のデスクへ向かった。
「あれ、谷口っちゃんどうしたの?」
同僚がこそりと話し掛けてきた。
「知らん。」
パソコンの画面から目を離さずに素っ気なく答えるが、こいつは気にも留めない。
「課長、激おこじゃん。なんかあったわけ?」
「なんで俺に訊くんだ。」
「だって、オマエ、谷口っちゃん係じゃん?」
あっけらかんとしたその口調と言葉に、思わずキーボードを叩いていた手が止まった。
「はぁ?!」