「だって、谷口っちゃん、めっちゃ笑顔だったじゃん!オレはオマケみたいな扱いだったし。どうなんだよー。」
ニヤニヤ気持ち悪い笑みを浮かべなが、肘で脇腹を小突いてくる。
なんとも古風な茶化し方が余計にイラつく。
「なに言ってんだ。ただの、後輩。それだけだよ。」
ため息まじりにそう答えるが、全く納得しない。
「ほんとかよー。あやしいぞー。」
こいつの中では、もう俺と谷口の恋愛関係が成立しているらしい。
面倒くさい。
「しつこい!」
無理矢理はねのけて、ブー垂れている同僚を無視して、自分のデスクへと向かった。
俺が谷口と?
阿呆らしい。
そもそも、恋愛なんて面倒なだけだ。
人生の何の役に立つのかも解らないものに、時間を費やする気になれない。
ましてや、心なんて相手次第で、自分の努力だけではどうにもならない問題がある。
そんな、相手任せの選択は嫌いだ。
俺は、自分で自分を決めていきたい。