そして映画が終わり、近くの適当なカフェに入った。
谷口は、やっぱりきょろきょろとメニューを見ながら俺を盗み見る。
どうせ、また俺に気を遣っているんだろう。
「決まったか?」
「あ、えっと……。」
「好きなもん頼め。」
「えと……。」
「俺に気遣ってんなら、もう作戦に付き合わねぇぞ。」
そう脅せば、やっと、
「この、ケーキセットにします!」
と、慌てて答えた。
やっぱり決まってんじゃねぇか。
なにを遠慮してるんだか。
「すみません。」
店員を呼べば、すぐに来てくれて、
「ブレンド1つ。」
俺はそれだけ言って、谷口を見た。
「あの、この本日のケーキセットを1つ、お願いします。」
「ドリンクはどうなさいますか?」
「えと、あ、紅茶のストレートを、ホットで。」
「かしこまりました。」
店員がそう言って頭を下げて離れると、谷口は力んで上がっていた肩を落とした。