「恋愛ものはニガテで……。あんまりよくわからなくて……。」
自信の無い、困ったような笑顔に、理由を聞きたくなったが、不意に電話での無言を思い出した。
こいつにだって、話したくないことはあるんだろう。
また、あんな風に拒否されたくはない。
どうしてか、そんな弱気な気持ちが沸いて、俺はそれ以上つっこんで聞くことが出来なかった。
「……そうか。じゃあ、チケット買ってくる。待ってろ。」
そう言って、カウンターへと向かった。
「え?あ!おかね!」
「あほ。後輩に出させる訳ねぇだろ。」
「でも、これはわたしの為の……。」
「いいんだよ。」
また、申し訳なさに押しつぶされそうな顔をする。
こいつは、本当に気を遣い過ぎだ。
俺にくらい、わがままを言って欲しい。
「でも、奢るんだから、観終わった後の感想発表、楽しみにしてるからな。」
「え?!発表ですか?!」
こいつの暗い顔が見たくなくてそう言えば、
「こ、心して観ます……。」
と、握りこぶしを作って、真剣な面持ちになった。
これで、奢られる罪悪感が少しはマシになったか?



