そして、日曜日。



イライラが消えたと思っていたのは、間違いだったようだ。

俺は今、猛烈にイライラしている。

あいつは本当に、俺をイライラさせる天才なんじゃないだろうか。





「おい…谷口ぃ!」


「ひょえ!す、すみません!」




仁王立ちでそう叫べば、街路樹の影からひょっこりと姿を現した。

待ち合わせ時間までは待っていたが、いつまで経っても声を掛けてこないことに痺れを切らした。





「あの、15分前には着いていたんですが…なかなか声がかけられなくて……。」





知ってる。

俺を見つけた瞬間に、どうやってそんなに早く動いたのか感心する程のスピードで、街路樹の後ろに隠れてしまったのを目の端で見ていた。




「はぁ?会社でいつも挨拶してんだろうが。」


「だって…スーツじゃないので、緊張して……。」


「お前だって、今日はスーツじゃねぇだろうが。」


「そうですけど……。神崎さん、かっこいいので、わたしなんかが隣に立つなんておこがましく……。」





ぼそぼそと泣き言モードの谷口に、余計イライラがつのった。

この間の、やる気はどこへ行ったんだ。