正直、驚いた。

根性があることは、ここ最近分かってきていたが、ここまで言えるようになるとは。





「神崎さん!お願いします!協力して頂けませんか?」





最初の頃は、俺が相談に乗ると言っても遠慮していたあいつが、力強くそう言った。




こいつは、本当に根性がある。

やる気もある。

そんなこいつを、放っておくなんて出来ない。





「わかった。じゃ、次の日曜日、空けとけ。」


「え?日曜…ですか?」


「作戦その3だ。デートするぞ。」


「で、デート?!」





悲鳴のような声でそう言った谷口は、きっとまた目をまん丸にしているのだろう。



そう思うと、じんわりと、なにか温かい気持ちになった。



イライラに似ているけど、どこか違う。

けど、やっぱりどこか落ち着かない気持ちだ。




「じゃ、またな。」


「え?あ!はい!おやすみなさい。」






まだ混乱しているであろう中でもきっちり挨拶をする礼儀正しさも、前までは面倒くさいと思っていた筈なのに……





イライラが消えて生まれた別の感情を、俺はまだよく分からないでいた。