「おはようございます!」
「おう。おはよう。」
俺がそう返せば、ぱっと表情が明るくなる。
「こ、これは、合格!ですよね?」
「まぁ、そうだが……その握りこぶしは必要か?」
「あ、その…気合いを入れないと、どもってしまいそうで……。」
「殴られるのかと思うわ。やめろ。」
「す、すみません……。」
「それ無くせば、もう自然な挨拶になるんじゃねぇか?がんばれよ。」
「ありがとうございます!」
「ほれ、田原きたから、練習がてら挨拶してこい。」
「はい!」
丁度、出社してきた同僚を見つけて、そう言えば、たたたっと小走りで駆け寄って行った。
どうなるかのか気になって、目で追う。
一旦止まって、深呼吸かそんな仕草をして、ぐっとこぶしを握った。
「おはようございます!」
あいつが一生懸命なのはよく分かった。
だが、あいつが抜けているということもよく分かった。
これは、こっちも根気強くいかねぇとだな。