そして、さらに1週間と数日後。
毎日の成果がやっと出てきたのか、少しは改善の予兆が見えてきた。
「お、は、よ、う、ございます!」
「……。」
「言えました!」
どこを踏まえて、なにを根拠にした自信なのか知らないが、パッと笑顔になる。
言葉を重ねないように、慎重に一言一言発したのだろうが、なんとも間抜けな挨拶だ。
でも、まぁ一応は成長したか?
なにより、表情が明るくなってきた。
そんな風に考えていると、笑顔が一変、不安そうな顔になる。
「言えて、ました……よね?」
「いや、言えてはいたが…ぶはっ!ハハ!ロボットみてぇだったぞ。」
くるくると変わる表情と、小動物のようだったり、ロボットのようだったりする様が可笑しくて、つい頬が緩んでしまった。
すると、谷口は少し驚いた顔をして、小さな声でぽつりと言った。
「……神崎さん、笑うとかわいい。」
「……はぁ?!」
何言ってんだ、こいつ。
「い、いえ!なんでもないです!」
そう言い捨てて、天敵から逃げるリスの様に自分のデスクへと逃げて行った。
なんだ、あいつ。
俺の笑顔が?
意味がわからん。
あぁ、またイライラする。
あいつと関わるとやっぱり心が乱れる。