「お久しぶりです」

「お久しぶりです」

「じゃあ、失礼します」

何も話す事はなく、儀礼的な挨拶をして去ろうとした。

「ま、待って…桃寺さん」

呼び止められて戸惑っていたら、公共の場で頭を下げる小野寺さんに、行き交う人達は好奇の目で見ながら過ぎていく。

「やめてください」

「許してもらおうと思ってないわ。ただ、私は、もう2度と同じ間違いを繰り返さないとあなたに誓いたいの。ううん、誓わせて下さい。お願いします」

「もう、やめてください。小野寺さんのこと嫌いでしたけど、今はなんとも思ってませんから、頭を上げてください」

彼女が体を起こすと、目に涙を溜めながら真剣な目をする彼女の本気が伝わってきた。

「わかりました。何を誓うんですか?」

「2度と、自分の気持ちを偽らないで、自分の力で彼を振り向かせると誓うわ」

「え〜と、聞いていいですか?」

「いいわよ」

「小野寺さんには、実は本命がいたということですか?」

「そうよ。かれこれ10年ぐらいかしら…相手にしてくれないから、彼以上の男を捕まえて見返そうと思って、とんでもない性悪女になってた自覚はあるのよ」

はぁ〜