「ううん、私こそ朝陽を信じきれなくて、あんな酷いこと言って傷つけてごめんなさい」

「初めて喧嘩して、莉子とこのままダメになるって思ったら、不安で、会社で莉子を見つけても目も合わせられなかった」

「私も」

2人で同じ不安を抱えていたらしいとわかると、同時に苦笑した。そして彼女の髪を一房掴み指に絡めて遊びだす。

「不安がってないで早く仲直りしてれば、とっくの昔に片付いていた案件だった。莉子を見かけると多岐川に早く仲直りしろとせっつかれても、俺は逃げて、その度に、あいつに怒られたよ。しまいに、あいつは梶岡と渡部に、このポンコツをなんとかしろと呼び出す始末さ…それだけ、俺は使い物にならなくなっていたらしい。ちゃんと仕事してるつもりでいたんだけどな…」

私の胸に頭を預けて、ギュッと体を抱きしめてくる。

「この部屋で一人になると考えさせられた。莉子のいる生活がどれだけ俺の活力になってたかわかったよ。いないだけで、この有り様だ」

「私の部屋もね、酷く散らかってるの。仕事はなんとかしてたと思う。でもね朝陽がいないと、全然ダメで、電話もメールも会いに行くのも怖くて、別れようって言われたらって考えただけで、悲しくて泣いてばかりいた」