「喧嘩したからって1人で何もできないのね」

「すみません」

部屋の散らかり具合に、砂羽さんはガッカリだったようだ。

「はぁ…莉子ちゃん、このままじゃ良くないと思うの。私と気分転換しに行きましょう」

私の落ち込む姿を見て、外に連れ出そうというのだろう。

そんな気分でもないけど、折角、来てくれた砂羽さんの誘いを断れないが…

「私、2人のお邪魔じゃないですか?」

「あら、大丈夫よ。彼は一緒に行かないもの」

「えっ」

「ほら、着替えて準備して出かけましょう」

砂羽さんに急かされて準備をした私を上から下まで見た彼女は、「何か足りないのよね…そうね装飾品かしら?莉子ちゃんの指、何号?」と言いながら、私のアクセサリーケースを開いて指輪を探している様子。

「私、指輪ってつけないのでわかりません」

「綺麗な指をしているのに、勿体ない。ちょっとこれつけてみて」

自分の薬指から抜いた結婚指輪を、私の手を掴んで薬指に入れていく様子を見ていたら「私と一緒ね」と、楽しそうに結婚指輪を自分の指に戻した。

玄関の外で待っていた梶岡さんに、砂羽さんが何か耳打ちすると、彼はニコリと笑いかけてきて「莉子ちゃん、いってらっしゃい」と見送ってくれた。