相原が質問にきたのももう2ヶ月前のこと。


1学期の二大イベントの期末テストも終わり、生徒たちは夏休み明けの文化祭に向けて動き始めていた。


今年は演劇。


小学7年生みたいなこの中1が演じる劇は子供っぽいだろうとナメていたのが間違いだった。


どの生徒も必死に練習に打ち込む。


どうしてかと聞けば一斉に「優勝したい」と口にする。


俺は良いクラスを持ったなぁって考えてた今日この頃。


相原の様子がおかしい。


いつも以上にぼーっとしていて、授業も上の空。


心配に思いつつも教室を出ようとすると。


「水華!」


と叫ぶ声。


慌てて駆け寄れば、ぼんやりした顔でその場に崩れ落ちる相原が目に入った。


「水華!先生、水華が!!」


焦り顔の梅田を冷静になだめる。


「僕が保健室に連れて行きますから、皆さんは授業に向かってください。
ああ、梅田さん。相原さんは保健室だということを先生に伝えておいて下さい。」


「…先生、水華の事頼んだから。」


皆不安そうな顔で出て行った。


「…軽すぎ。」


保健室に連れて行く間も頭に浮かぶのはこいつの笑顔。


もっと早くに声をかければ、と悔やむ。


それでも、そんな思いは皆同じだと心に言い聞かせ、保健室に寝かせると職員室に戻った。