廻天の王女と太陽の騎士は穏やかに恋をする

『そんなこと、気にしなくて良いんだよ。
紗季さんが出来ることだけしてくれたらそれで良い。
残念ながら、お手伝いさんを雇うだけの甲斐性は僕にはないけど、一人暮らしをしてそれなりに長いから、家事なら僕にも出来るから。』

働いて帰って来る翔吾さんに家事まで手伝わせることなんて、出来るはずがありません。
それに、家事すらまともに出来ないような者を、翔吾さんのご両親がお許しになるはずもありません。



(……そうだわ!)



私はその時に気付いたのです。
たとえ、私が翔吾さんと結婚したいと思っても、翔吾さんのご両親がそんなことを許されるはずがないのです。



そう思ったら、悲しい反面、不思議と気持ちが軽くなりました。



そう…きっと、私は、初めての恋に浮かれていただけなのです。



『紗季さん、どうかしたの?』

『ごめんなさい。
今、お友達から電話がかかってきたので…』

『あ、了解です。じゃあ、またね。』

翔吾さんに嘘を吐いてしまいました。
私はいつの間にか流れ出た涙をそっと拭いました。



打ち明けなければ良かった。
家族になんて会わせなければ良かった。
今更そんなことを思っても仕方がないことですが…



翔吾さんのことを打ち明けなければ、きっともっと長い間、幸せな時を過ごせたでしょうに。
未練がましい自分自身を恥じながら、私はまた一筋の涙を流しました。