早朝郵便配達のバイトを終わらせ、光を保育園まで送り届ける。

朝食を食べている時間が無いのでいつもこうして学校で食べている。

「もぉー!緋奈(ひな)朝食を学校でとるとか、少しはバイト休んで息抜きしたら?体調崩すよ?」

そう言って苦笑しながら左斜め前のせきに座るこの女の子は新井 心。中学校からの親友で私の家庭の事情を知っていつも気にかけてくれている。

「ありがとぉ〜でも私体は丈夫だから大丈夫!!」

「緋奈ったら(笑)まぁ、何かあったらいいなね」

「うん!いつもありがとっ」

ガラガラガラ 先生が入ってきて私は弁当を急いで片付けた。
「ホームルームを始めるぞ〜あっあとそろそろ席替えするか」

(席替えかぁ、心と離れちゃうなぁ)

席替えは1人ずつくじを引いて決める方式。
私は窓側から2番目の列の1番後ろだった。

(隣だれかなぁ)

席を移動して隣をみて思わずドキっとしてしまった。隣はなんと黒崎君だった。

それに気づいた周りの女子が

「浅倉さん!席変わって!」

「え?あっいいよ」
(私の隣なんて黒崎君もきっと嫌だろうし)

席を移動しようとした
するといきなり隣から腕をつかまれ

「クジで決めたんだから俺の隣は浅倉だ。」

私も含め周りにいた女の子達も驚いていた。

結局先生からもクジで決めたから席の変更はなしだと注意され私は黒崎君の隣の席ということになった。

さっきの黒崎君の行動には驚いたもののその後会話することもなかったため、ただの気まぐれだったのだろう。

放課後になり図書室へ向かおうと廊下にでたとき黒崎君に話しかけられた。

「今日も放課後委員会の仕事あるか?」

「え?あ、うん。あるよ」
(いきなり、どうしたんだろう)

「俺も行く。今日部活休みだから」

「あっそうなんだ!せっかくの休みなら家に帰ってゆっくりしたら?」

「いや、大丈夫。いつも1人でやらせてたら悪い。」

そう言いながらスタスタと図書室へ行ってしまった。

(黒崎君とき2人なんて緊張するなぁ…
まぁ2人でやれば早く終わってバイト行けるからいっか)

私も図書室へ行きしばらくは黙って作業をしていた。

「これの仕事いつも浅倉一人でやってるのか?」

「うん、そーだよ」

黒崎君がこちらをじっと見つめてくる。
(え、な、なんだろう?)

「これ、大変な仕事じゃん。前、仕事全然ないって言ってなかったっけ?」

「あ、うん。気黒崎君部活忙しそうだし、これぐらいなら一人でできるかなって」

「....今度から出来るだけ来れるようにするから。部活前とか」

「えええ?!そんないいよいいよ」

「いいんだよ。俺も図書委員だし。」

「そっか、ありがとう」
今度からは一人じゃないんだと思うと少し嬉しくて、黒崎君にニコッと笑いかけた。

「....!!」

何があったのか、黒崎君はいきなり手で顔を隠した。

「ど、どうしたの?!」

駆け寄ると黒崎君は耳まで真っ赤だ。

「熱?!もしかして体調悪かった?」

「はぁ、もう...ずるい」

「へ?」

「熱とかじゃないから大丈夫。」

「あ、そ、そう?」

「作業続けよ。」

黒崎君は何事もなかったかのように作業を始めた。

それを見て、私も作業に取り掛かった。

(そろそろ、4時か)

「黒崎君、ごめん。そろそろバイトの時間だから、抜けてもいいかな?」
(まだ少し残ってるのに申し訳ない)

「バイト?早い時間からやってるんだな。部活とか入ってないのか?」

「あ...うん。部活入ると色々お金かかっちゃうし、弟の面倒とか見ないといけないからさ」

「色々考えてて偉いな。浅倉、親に怒られることなさそうだもんな。」

「....」

「浅倉?」

「...いやいや!めっちゃ怒られるよ(笑)
毎日叱られまくり」

「へえ、意外だな(笑)」

「そうかなぁ?(笑)あっそろそろ行かないと!ほんとごめんね。また明日!」

「おう」

これ以上黒崎君と家族の話をしていると、思い出して泣いてしまいそうなので、私は
逃げるように図書室を出た。


次の日の朝、私は心の席へと避難していた。
私の席は、黒崎君と話したい女子に占領されていた。

「あんな無愛想な奴のどこがいいんだか。」

心ぶつぶつと文句を言っている。

心に昨日の図書室での出来事を話した。

「緋奈...大丈夫?ほんと辛くなったらいつでもいうんだよ?」

「うん、ありがとう。でも全然大丈夫!
あっ私先生に呼び出されてるんだった。
ちょっと行ってくるね。」
(心は優しすぎるよ。迷惑なんかかけられない)