なんてことを考えているうちにあのビルのエレベーターの前まで来てしまっていた。

中に入るつもりは無かったのに。


帰ろうと思い、エレベーターに背を向けようとした瞬間耳元で声がした。


「 もどりたくはないですか? 」


俺は驚きながらもその男の声の方を振り返った。


すると全身黒のスーツを身にまとい、シルバーのスーツケースを持つ男がこちらを見つめ不気味に微笑んでいる。


その男は物々しい雰囲気とは裏腹に女とも間違うくらいの端正な顔立ちをしている。