彼女は、ゆっくりと話し出した。


「あなたと初めて会った時、私ケガしてたの。」

そんなことあったっけ?全然おぼえてなかった。

「私、ひざから血が止まらなくって。痛いし、血恐いしで、どうしたらいいか分からなくなって」



「そしたらね?あなたがきて、ネクタイ取って私のひざに巻いてくれたの。」


こいつ、そんなに鮮明に覚えてたんだ。


「あの時のチェック柄のネクタイ、私今でも持ってるの。」

「でも、あなた全然覚えてなくって。だから、ネクタイしてくれたら思い出してくれるかもって。」