そのおかげで、緊張はいつの間にか溶けていた。
見ると言った手前、目をつぶる訳にもいかずに私は画面をひたすら見ていた。
怖いのに、なぜか集中して見てしまう。
時折、ビクッとしてしまうのは許して欲しい。
叫び声を上げないだけマシだろう......。
私は最後まで、手のひらをぎゅっとキツく、握りしめていた。
***
「お、終わった......」
画面に表示されているのは、2時間ーー。
やっとエンディングが流れて、肩の力が抜けた。
固まっていた身体を、少し動かして解す。
ほっと、ため息をつきながら、ベットの縁に背中を預けた。
「じゃあ、次はーー」
「待って、もう十分だからっ!」
次のホラー映画を漁り出した誠也を、全力で止めた。
これからもう一本見るなんて、私には耐えられない。
「なんだ......ビビっている杏を見てるの楽しかったのに」
「えっ?」
そんなこと言ったら、誠也は映画ではなく、私を見ていたことになる。



