離さないで、御影くん



どうして?よく分からない。

まともに喋れない私が、彼と遊びに行くの?


「俺、水曜と土曜は部活無いんだ。
紀乃ちゃんのスクーリングの後とか、水曜の放課後とか。どっか遊びに行かない?」

「……えっ、と…」

「また連絡するから、それまで考えておいて?」

「……分かりました」


急展開すぎてよく分からないけど。


「じゃ、また!」


彼は元気に手を振って、行ってしまった。

…私の行く予定の教室と、彼がペンポーチを置いてきた教室、一緒なんだけど。


「おおっ、ここで授業なの?」

「……はい」

「そうなんだ。頑張ってね!」


そう言って、また急いで去って行った。


イケメンで、とっても優しくて、変わった人。

…友達に、なれるかな。

とか、図々しいことを考えてしまう。


その日の夕食。


「こないだのハンカチの人、同じ高校の人だった」

「彼も通信制?」

「いや、全日制。
忘れ物取りに来たって言ってた」


…そういえば私服だったな。
全日制の方には制服あるのに。

まあ、通信制の生徒と紛れるからバレないか。
逆に咎められそうだし。


「あっちから声かけてくれたのか?」


お母さんから話を聞いていたらしく、お父さんも尋ねてきた。


「うん。それでね、ハンカチのこと話したら、今度返すってことになって、連絡先も交換したんだ」

「随分懐っこい子だったんだね」

「うん。お兄ちゃんって感じ」

「結局年上だったんだ」

「バスケ部の2年生って言ってた」

「あ、絶対イケメン」


バスケ部に対する顔面偏差値の信頼感は何なんだ、お母さん…。