離さないで、御影くん



しまいには、頭を撫でてくる。


「あっ、俺何してんだろ」


何故か彼が照れて、私の頭から手を離す。


…そういえば。
と、ハンカチのことをふと思い出す。


「……ハンカチ、洗って、あります」

「へ?…あ、こないだあげたやつ?
1度あげたもんなんだから、気にしないでよ」

「……名前、書いてあったから…」

「名前…?」


弟のだったのかなって思ってたけど、書いてあった名前と、今名乗ってくれた名前が一緒だったから、彼本人のだろう。

彼は斜め上を見上げて何か思い出す素振りを見せた。


「青いタオル地のやつだよね?」

「……うん」

「あー、思い出した。あれ小5から使ってて、母親が名前書いたんだと思う。わー、紀乃ちゃんみたいな良い子で良かった!個人情報流出じゃんね!」


平仮名で書いてあったから、そんなに特定できないと思うけど。


「…もし返してくれるって言うなら、連絡先交換しない?」

「……いいですよ」


部活やってるなら、そういつでも会えるわけじゃない。連絡が取れなかったらどうしようもないもんね。

LINEのQRコードを出して、彼に読み取ってもらう。


「ねえ、紀乃ちゃん?」


唐突に名前を呼ばれる。
目が合うと、彼は少しだけ照れたように見える。


「ハンカチ以外にも、遊びに誘ってもいい?」

「……え?」