「栄」

「はっ。」

「信長と信行はどうだ」

「相変わらずでございます。」

「そうか。…なあ、そなたはどう思う」

「どちらが跡継ぎに向いているかでございますか」

「そうだ。」

「普通ならば信行様と申す所ですが、信長様の方が良いかと。」

「ほう。珍しい事を申すなあ。なぜだ」

「信長様がよく一緒に遊んでいらっしゃる方と、信行様がうまく渡り合えるとは思いません。信長様の方がうまく世渡りできるとそう考えたまでです。」

「なるほど。わしはな、信長に家督を譲るつもりじゃ。」

「…。」

「したがって、わしが死んだら、そなたは信長に仕えるのだ。良いな?」

「はい。かしこまりました。」

「すまぬな。お前の意志ではないのに。」

「何をおっしゃっていらっしゃるのですか。」

「…気にするな。さがってよいぞ」

私は頭を下げ、信秀様の元を去った。