だからこそ先に先制をかけたのだ。

「いいじゃん。同棲。菫は生まれて一度も実家を出た事がないんだから。
俺んちで良ければ部屋も1室余ってるし、都内だから仕事も通いやすくなる。」

「いや、冷静に考えてみてよ」

ほら出た。また冷静に、だ。口癖か。

「私と潤が同棲ってすごく変じゃない。変な事をすると良くない事が起こるから嫌だわ。
それに冷静に考えて同棲なんて一人暮らしも認めないお父さんが許す筈ないし……
大体何で私が潤と同棲しなきゃいけないのよ。私はあくまでも恋人と同棲がしたいのよ」

ハァーと大きなため息を吐いて、窓に頬杖をする。

確かに、俺と菫が同棲するってのは変な話さ。…でも同棲がしてみたいんだろう?それならばよく知らない男より、俺の方がよっぽどマシではないか?

「恋人ごっこつーか」

「え?」

「疑似恋愛みたいな。
だってこのままタイプじゃない男と結婚するのは嫌なんだろう?
でもおじちゃんにも逆らえない。それなら俺と恋人ごっこしてみない?」

「恋人ごっこ…?」

「ほらアレだ。小さい頃にしたおままごとみたいなもんだよ。深く考えなくていい。
菫のしたかった事を俺が叶えてあげるよ。案外楽しいかもよ?一緒に暮らしたり、デートをしたり、猫を飼ったりさ…
今更幼馴染とーって菫は思うかもしれないけど、気心が知れてる俺とじゃないと出来ない事は沢山あるだろう?」

また視線を落とし、彼女は何かを深く考え込んでいるようだ。

だからいつもいつも考えすぎなんだ。

考える事は悪い事ではない。けれど考えてばかりいて行動に移せないのは良くない事だろう。