「そうだよ。今までおじちゃんの手前我慢をし続けたんだろう?
人生の全てを知っている俺の知り合いが嫌だと言うのであれば、一層全部知ってる俺でいいんじゃないか?
俺が菫のしたい事を全部叶えてやるよ!こう見えても恋愛経験は豊富だし、何よりお互いの事をよく知っているから楽しいと思う」

俺は、なんて提案をしているのだろう。

自分で言っていて、恥ずかしくなってきた。

窓越しに菫を見ると、彼女は何かを深く考え込んでいるような神妙な面持ちを見せる。

「私…同棲がしてみたいわ…」

そして生真面目な彼女の口からとんでもない言葉が出た。

「ど、同棲?!」

「大輝さんが言っていたの!同棲は素敵なものだって。」

西城さん情報がどれだけ正確かは知らないが、同棲は確かに悪いものではないと思う。

俺だってそれなりに恋愛経験のある25歳の男だ。だから同棲は何回か歴代彼女とした事がある。

けれど、いきなり同棲はないだろう。

「そして猫を飼いたいのッ。これも大輝さんが言っていた事なんだけど、動物には人を癒す不思議な力があるらしいのよ!」

菫がどれだけ西城さんに熱を上げていたかは理解した。

それに俺は元々動物が好きで、猫も可愛いとは思う。けれど菫は話がいきなり飛躍しすぎなんだと思う。

突拍子ない事を言うのは真面目さ故なのか。

言った後にハッとした顔をして、気まずそうにもじもじし始めた。

きっと彼女は次に現実的な事を言うのだろう。’そんなの夢物語みたいね’と。変な所がリアリストなのは君の良い所でもあり悪い所だ。