「本当に可愛いわねぇ、えーちゃんは。猫って飼った事がないけれどこんなに癒されるものなのね」


「確かに!生傷も絶えないけど…何故か許せてしまう可愛らしさがある。
それにえくぼは美人さんだしな。菫に似て」

「えーちゃんは美人と言うよりは可愛らしいわ。潤に似て」

こんな俺たちだから、本当の子供が出来たら溺愛するに違いない。

菫と俺と、えくぼと子供って生活も悪くない。子供にとっても猫にとってもお互いの存在は良いらしいし。

「それにえーちゃんってば潤の事が大好きみたいなのよね。私の方がこんなに愛しているのに」

ふぅーっとえくぼを見て菫がため息をつく。

「え?!そうか?!」

「そうなのよッ!これを見てよッ!」

携帯の画面の中には、俺がソファーで眠っている姿。そこから少し離れて寄り添い合って眠るえくぼの姿があった。

起きたらサーっと逃げていってしまうのだが、寝ている時は寄り添っているらしい。…そういう所も菫そっくりだ。


夕食を食べ終えて菫がフルートを手に取った。それを合図に俺も電子ピアノを開く。

ソファーで眠っていたえくぼが耳をピンと立ててこちらへ目を向ける。

えくぼが来てからより一層ふたりで演奏する事が増えた。

菫いわく、えくぼは俺たちのフルートとピアノの音が好きなんだそうだ。 それを室内に響かせると、安心したように体を丸め目を閉じる。猫にとってもこれは子守唄になるのだろうか。