俺の笑顔に西城さんは怪訝そうに眉をひそめる。

好かれていないのは分かっている。その理由も理由だけど。

この人は美麗ちゃんに近づく男は誰であろうと気に食わないんだと思う。超超超ヤキモチ妬きだ。

悪い人じゃないってのは分かるけれど、俺既婚者だぞ?!

「美麗に近づくな」

「とは言われましても今日は西城さんの頼みで会いにきたのですが?」

「俺は菫さんに頼んだだけでお前に来いとは言ってない!女みてーな顔しやがって!ころころと人懐っこく犬みてえな性格して!男の癖に!」

女みたいな顔も、人懐っこい性格も、俺にとっては褒め言葉である。

だって隣にいる君がさ…

「西城さん…それは潤の良い所ですよ。
私の夫に……あんまり絡まないで下さい」

少し照れくさそうにそう言ってくれる君が、俺をいつだって肯定してくれるから。

だから俺にとっては欠点さえ自分の良い所に変換出来るんだ。

まぁ菫はそんな事に気づいちゃいないんだろうけど。


俺に睨みをきかせる西城さんはまるで誰にでも噛みつく野良猫のようで、美麗ちゃんが彼の頭を強く殴る。

そうしたら捨てられた子猫のように項垂れる。やっぱりふたりはお似合いだと思う。

「さ、こんな馬鹿は放っておいて行きましょう、佐久間さん、菫さん」

「馬鹿とはなんだ!馬鹿とは!!」

実は先日西城さんに頼まれごとをした。

そして今は西城さんの掛かり付けの動物病院へ向かっている所だ。

菫が仕事で西城さんと会う機会があった時に色々と話していたみたいで、その中で猫を飼いたいという話をしたらしい。

けれどペットショップに行ってもいまいちピンと来るような運命の出会いが無かった。それだったら、という事で紹介されたのがとある動物病院だった。