「菫…。でもさ親は俺たちより確実に早く死んじゃうよ。
病気だけじゃなくって事故でだって突然会えなくなってしまう可能性だってある…。
そう考えたら本当にこのままでいいのか?菫が俺を選んでくれるのは嬉しいけれど…俺は菫の事はおじちゃんにも認めてもらいたい。
そうじゃなきゃ菫と一緒にいたってどこかで寂しいし、このまま縁を切る事になったらきっと後悔する事ばかりになってしまうよ」

「私は帰るつもりはないわよ。あの家はもううんざり。帰ったら最後。お父さんは私を二度と家から出してはくれないわ。
そんなの嫌ッ。私は自由になるの。自分の好きな事をして好きに生きるの。お父さんに縛られて生きる人生はもうまっぴら。
だってそれを潤が教えてくれたんじゃない……」

布団越しにゆっくりと菫を抱きしめる。

温かい体だ。

俺だって菫と一緒にいたい。このままここで暮らすのは幸せだ。

何気ない日常に君がいてくれた事がこんなに幸せだったなんて。

「おじちゃんに認められずに縁を切ってしまって俺と一緒にいる未来。
それが菫の望んだ本当の自由だった?」

「それは……」

布団を捲り上げ、菫の身体をこちらへ引き寄せる。

俺の胸の中に抱きしめられた菫は、まるで子供のような顔をした。

離したくないなー…。そんなに可愛い顔で見つめられたら、離したくないのはとっくに俺の方だった。

ぎゅっと抱きしめて頬を指で触る。菫は花のような笑顔を俺へ見せてくれるけれど、本当に笑っていたか?

菫だってとっくに気づいている筈。大好きな家族に認められて一緒にいた方が幸せだという事を。