「潤くん、今日はわざわざ来てくれてありがとうね。
それにせっかく来てくれたのに、お父さんが失礼な態度を取ってごめんなさいね?」

「いえいえ~、おじちゃんのああいう感じにはもう慣れてるし。それに昔から知ってる人なんだから全然怖くないよ~…。
体は心配だったけど、案外元気そうで安心したし」

「えぇ、病院の先生もねただの過労だって言ってくれて。
心配だから取り合えず今日は一晩入院しましょうって事でね。私ったらお父さんが死んじゃうんじゃないかってびっくりしたの。
綾ちゃんにもお世話になったからお礼を言っておいてね」

「分かったよ。おばちゃんもあんまり考えすぎないようにね?おばちゃんの方がよっぽど体は弱いんだからさ。
それこそおばちゃんが倒れたって聞いたら菫も倒れちゃいそうだしさ」

その言葉に、おばちゃんは静かに微笑んだ。

「潤くんは優しい子よね…」

「え?」

「昔から潤くんが優しい子だっていうのはおばさんはずっと分かってますよ。
いっつもニコニコしていて、学校でも誰にでも優しかったし私達にもご両親にも優しかったもの。
小さい頃の菫はそれを自分の事のように嬉しそうに話してくれた事があったわぁ…」

「優しいっていうか…優柔不断なだけかもしれないっすけどね。」

「それにね、あの人も潤くんが優しくて良い子だって事は誰よりも分かっているんですよ。
だって分からないはずがないもの。25年間もずっと見守ってきた子供ですよ。
だけどあの人は素直になれない所があるから…そういう表現は上手ではないの。
会社では上手く出来てても家族の前では難しい事ってあるのよね。それは菫にも言える事だけど」