夜の病院は当たり前だが静かだ。

そして個室は思っているよりずっと広い。

そのせいだろうか、この人がいつもよりずっと小さく見えるのは。子供のように布団を被って俺を拒否するその姿は、ちょっぴり切ない。

会いたかっただろうに、菫に。きっと1番会いたかった人のはずだ。それが代わりに今1番会いたくない俺が来てしまった。がっかりしたに違いない。

「菫は……元気か?」

布団を被ったままぼそりと呟いた。

「まぁー元気っちゃ元気だけどさ」

「なんだそれッ?!元気か元気じゃないかのどっちだ!」

布団を振り払いこちらへ目を向ける。…確かにおじちゃんは痩せたと思う。元々細身だったが、痩せたというよりかはやつれたといった感じか。

疲労で倒れたって言っていた。食欲がなかったのも、眠れなかったのも、きっと菫が心配だったからに違いない。過保護な父親だとは思う。それでも心配していたには違いない。

「菫は元気。でもいっつもおじちゃんの事気にしているように見えるけどね。それを考えたら元気ではないのかもね」

「何を…自分が勝手に連れ去ったくせに」

「連れ去ったって…。人聞きが悪いなぁ~…」

「それに何だ、あのS.A.Kのカタログは…。」

「あぁ!おじちゃん見てくれた?!菫ちょ~綺麗だよね~?」

またまたぎろりとこちらを睨みつける。…だから怖いって…。

「あんなちゃらちゃらした格好をして…ちゃらちゃらした雑誌でモデルを勤めるなど」

「ちゃらちゃらって…おじちゃんの友達のとーちゃんの会社だけど…
本当に失礼なんだから」