そりゃそりゃあもう大切過ぎて25年間も閉じ込めておきたくなるほどだ。

おじちゃんの気持ちが分からない訳でもないんだ。俺だってもしも自分に娘が出来たらそんな気持ちになったりするかもしれないし、さ。

でも菫の人生は菫の物だ。

けれどおじちゃんがいなければ菫が存在しないのも事実。

お父さんなんてもういいって意地を張っていたって、本当はおじちゃんに祝福されたいに決まっている。けれど菫とおじちゃんがふたりで話し合えばそりゃあぶつかってしまうさ。同じようなふたりなんだから。



こういう時隣同士って不便だ。

俺たちの問題なのに、親同士が揉めたりする。

ため息が止まらない。けれど話し合いは必要だ。どんな場においても。

憂鬱な気持ちのまま、お隣のインターホンを鳴らす。何度も来た事がある家だったはずなのに、扉がやけに重い気がする。

「あら、潤くん!」

「おばちゃんこんばんは。おじちゃんいる?」

菫の母は困ったように目尻を落として、微笑む。ちらりとリビングを見つめて「いるけど…」と何とも歯切れの悪そうな声を出す。

だよな…俺に突然尋ねられたっておばちゃんだって困るよな。

「ね、取り合えず上がって?潤くんがうちに来るのは久しぶりよね?」

「大丈夫ですか?」

「えぇ大丈夫ですよ。けれどもしもお父さんが失礼な事を言ったら、本当にごめんなさいね?」