「おー、潤帰ってきてたの?!なによッ連絡位しなさいよッ!」

こんな大声にも構わずに父はいびきをかいてソファーで眠っていた。…どれだけ耐性がついているんだろう。

父のお腹をバシバシと叩き「あんた!潤が帰ってきたよ!」と言うと、ふがっと鼻を鳴らしてゆっくりと目を開く。

眼鏡をかけて俺を確認すると「おお…潤おかえり」と小声でこちらへ言った。…全くなんつー対称的な夫婦だ。

「今日は別に実家に用事があったわけじゃないけど…かーちゃん元気そうで安心したよ」

「おお。めちゃくちゃ元気だぞ?もう仕事もしてるし、やっぱり仕事はいいねぇ~。家にこもってこの人としか話が出来ないと途端に年老いた気がしてね」

「そか…。それは元気そうで結構な事だ」

「あんたあれだろ?!菫のとーちゃんに話しにきたんだろう?」

口には出さなくても俺の行動はこの母にバレバレらしい。

「つーかあたしにも文句言われたんだよッ。うちの菫がお宅の潤くんに騙されて幽閉されているらしいってさ。」

「ゆ、幽閉?!」

何という被害妄想…。菫の妄想癖はやはり父譲りなのだ。どこかあいつも浮世離れしているというか…しっかりしてる癖に時たま変な事を言い出すからな。

「殴ってやったけどね!」

「殴ってって…」

「うちの潤がそんな事するわけないだろ!って。そうしたら菫のとーちゃんはおどおどして逃げて行ったけど、うるさいったらありゃしないよ。
菫を返せとか、娘を騙すなんて信じられないって。人聞きが悪いったらありゃしない。なぁ?!とーちゃん?」