さらりと人を褒めるが、付き合っている彼女以外眼中にはないほど一途なタイプである。

「ありがとうございます。大輝さんに褒められるなんて光栄です。この洋服は幼馴染の会社の物なんです」

「あぁ佐久間潤……」

顔を上げた大輝さんは少しだけ眉をしかめ口をへの字に曲げる。

潤は昔大輝さんの彼女である美麗さんに手を出そうとした経路から、大輝さんにとっては気に食わない存在なのである。

「S.A.Kはファストブランドだけど質がとても良いですよね。若者向けだがデザインもすごく良い、と美麗が言ってました。
僕はあまりそういった安物の服は着ないんですが、菫さんはそういった格好の方が似合いますね。少し華やかというか」

大輝さんの言葉に目をぱちくりさせる。

「いや、嫌な事を言ってしまったのならばすいません。
菫さんはいつもシンプルだけどブランドのお召し物ばかり着ていらっしゃるようですから。
そういった服よりもよく似合っていると言いたかったんです。僕もどちらかというと高級ブランド志向の人間だから人の事は言えませんが……」

少し困った顔をこちらへ向けたけれど、それは本音のように感じた。

「私も……自分が生粋のお嬢様だという事を最近知ったばかりよ。
昔から名だたる高級ブランドなら何故か安心というか…そういう物しか着た事がなかったから、潤のブランドの洋服も着た事はあまりなかったの。
でも着て見たら結構可愛いし、着心地も悪くないの…」

「それはそれは良かった。幼馴染の彼とは仲良くやっているようで」

「えぇ。実は付き合っているんです」

と、言ったら大輝さんは珈琲を吹き出した。