あぁ。菫が自分と同じような事を思っていたのか。そう思うと胸が締め付けられる気持ちになる。

あのペットショップにいたガラスケースの中の動物たちは、まるで自由のなかった菫のようでもあった。そんな自分の境遇と重ねてしまったのだろう。

「だって全部の子たちを買う訳にもいかないし、そう考えたらあの中で1匹なんて選べないわ……。たとえ1匹を選んだとしても他の子たちの行く末を考えたら素直に可愛がれないわ。
大輝さんに猫はいいもんだって聞いてたけど、大輝さんは捨てられていた子猫を拾ってきたそうなのよ。しかも最初は猫が好きではなかったと言ってた。
そう考えればその猫ちゃんに会えたのは大輝さんにとって運命なのよね。…私、自分の運命をお金で買いたくないわ」

菫らしい言葉だとは思った。

まぁー…そう簡単に命を金銭でやり取りするのは良い事だとは思えない。

少しだけ落ち込んでいた菫の顔を覗き込むように見て、微笑みを落とす。

「菫はどんな子が欲しい?」

「ん~……。特別な子じゃなくっていいの。
血統書もついていなくていい。可愛くなくてもいいわ。不細工で構わない。
ただ私だけを必要として愛してくれる存在ならどんな子でもいいの。ペットショップにいた子たちなら大丈夫よ。まだ小さくて可愛い。
心の優しい飼い主に大半は引き取られるでしょう。私はもっと…誰からも必要とされていなくて寂しさで震えているような子がいい……」