「ねぇこれ見ていい?」

菫が手に取ったのは俺の出ている雑誌やカタログである。パラパラと何冊も捲りながら「すごいわぁ」と感心しているようだ。何となくくすぐったい。

「やっぱり潤ってかっこいいのねぇ」

何を今更。しかし改めて言われると照れる。ついついそっぽを向いて真っ暗になっているパソコン画面に向かい合う。

「この間の撮影の時も思ったけど…潤はかっこいいわ。芸能人でもおかしくない程…。
まぁモデルもやってテレビにもちょくちょく出ているんだもの、芸能人みたいなものよね。そう考えたら私とは全然違う世界の人よ」

「もーだから違う世界の人って何だよ。俺はお前の前にいるし、ガキの頃から何も変わっちゃいねぇよ。別の世界の人だと思うのならそれは菫が遠くに勝手に行ったって事だろー?
それにモデルの仕事は将来的に自分のブランドを出したら、メディア関係につてがあったら宣伝効果も上がる。だから芸能界になんて興味はないよ。ぜーんぶ将来の自分の仕事の為にしてるだけだよ」

こちらを向いて目をぱちくりとさせた菫は、また感心したように言う。

「潤は将来の事をよく考えているわよね。今自分がしている事だって未来に繋げるために頑張ってるんだものね。
それに比べたらやっぱり私は駄目な人間だわ。自分の親の会社である篠崎リゾートになんとなく就職して、仕事しているんだもの……」

「何となく就職してるつっても仕事にはやり甲斐を感じてるんだろ?それならいいじゃんか。自分を卑下するような言い方はやめろって」