そんな事より何故私は呼び止められたのか首を傾げていると、陛下は淡々とした様子で話し始めた。
「今度、他国でパーティーが開催される。それにそなたも参加せよ」
「……はい!?」
思わず『そうなんですね』と、言いそうになってしまった。
「何故、私が……?」
陛下が直接参加されるという事は、恐らく重要なパーティーだろう。
重要でなくても、陛下は普段からパーティーには参加されていない。
一体どんな風の吹き回しだろう。
しかも、そんなパーティーに平民の私を誘われるなんて…。
「エスコートをする女が必要だが、他の奴は色々と面倒でな」
「……面倒?」
何が面倒なのかは良く分からないけれど、一つだけ言える事は陛下に誘われたら相手はその気になってしまうだろう。
貴族の女性以外にも、この城の中では陛下の隣を狙っている人が大勢いるから。
私を選ばれたのは、単に陛下にとって何か都合が良かったのかもしれない。
それは良いとして……
「恐縮ですが、私はダンスが出来ません。誘われても陛下が恥をかいてしまうだけかと思いますが…」
今の境遇になる前は、メイドとして何か仕事の役に立つかもしれないと、興味本位で社交界の知識本を見たりしていたけれど、実践はまた別だ。
「そこは安心しろ。有名な講師を用意してやるから、しっかりと学ぶといい」
「……ありがとうございます」
まぁ、覚えていて損はないかもしれない…。
陛下は結局図書館へ何しに来たのか
「不便があれば、ファンに言うといい」
満足気に図書館から出て行ってしまった。



