暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》




***


「アニ様がお持ちになっている本は、どのような話が書かれているのですか?」

「あ、これ?」

サニーの提案により皇宮図書館を利用していた私は、いくつか本を手に持っていた。


アンディード城には使用人が自由に使っていい共同図書館と、許可証がないと中に入れない皇宮図書館の二つがある。


共同図書館はメイドとして働いていた時によく利用していたけれど、皇宮図書館には許可がないと入れない為、どんな本があるのかずっと気になっていたのよね。


共同図書館よりも種類が豊富で面白い小説も沢山置いてあるから、客人という立場ではなくなっても利用したい……。


…って、本の内容について聞かれていたんだった。


「最初のページを軽く見ただけなんだけど、この本は不思議な力を持つ聖女様が王様と一緒に国を作る冒険の話みたい」

「とても夢の詰まった素敵な話ですね」

「でしょう!読むのがとても楽しみだわ」


不思議な力を持つ聖女か……。


ちょっと気になるな。


少し浮かれ気分で図書館の出入口へ向かう。


付き添いで一緒に来たもう一人のメイドがドアを開けようとした時だった。


ガチャ。

「え?」

思いもよらない相手の姿に思わず気の抜けた声が出る。


ドアを開けようとしていたメイドも、その姿に私の後ろに控えてしまった。