暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》



「他に誰がいる?別に何とも思っていないのなら、誘えば良いではないか」



「確かに、他の女よりはマシだが…まぁ、良いだろう」

久しぶりに他国と交流しながら奴らの腹の底を探るのも別に悪くないか。

「では、向こうには出席と伝えておくぞ」

「あぁ」

期限が迫っているのか返事を聞くや否や、ファンは急ぎ足でその場から出て行った。

「そう言えば、まだ手を付けていなかったな」

運ばれたコーヒーの存在を思い出し一口飲んでみるが、時間が空いたせいか少し冷えていた。

飲めない事はないが。

「……まだ帰って来ていないのか」

その味は、いつもの味ではなかった。

三日間の里帰りと聞いたが、何かあったのだろうか。

側に控えるメイドに尋ねると『長期休暇を取っている』を返ってきたが、あの味を淹れられるのはあのメイドしかいない。


こんなにも待ち遠しく思うのは、初めてだ。


「…早く帰ってきて、またあの味を飲ませてくれ」


顔も名前も知らないメイドに向かって静かに呟くと、気晴らしに図書館へと向かう事にした。